ニュース原文:https://www.biometricupdate.com/202607/japan-eu-validate-cross-border-digital-wallet-interoperability

2026年7月17日、Biometric Updateは、日本とEUがデジタルウォレットを使った学習証明書の越境相互運用実証に成功したと報じました。EU側も7月16日に公式レポートを公開し、日本の実証環境とEU Digital Identity Wallet(EUDI Wallet)のプロトタイプの間で、学習証明書の発行・保管・提示・検証が行えることを確認しています。

今回の実証は、2024年4月に日本のデジタル庁と欧州委員会が署名した「Digital Identities and Trust Services」に関する協力覚書を背景に進められたものです。テーマは、学生が国境を越えて学習成果や資格を示す場面です。大学への出願、留学、就職、銀行口座開設など、本人と資格の確認が必要な場面に広がる可能性があります。

学習証明書が国境を越えて使える?

今回の実証では、日本の学生が日本のウォレットから欧州の検証者へ学習証明書を提示するシナリオと、欧州の学生がEUDI Walletから日本の検証者へ提示するシナリオが検証されました。さらに、日本側の発行者がEUDI Walletへ、欧州側の発行者が日本のウォレットへ証明書を発行する流れも確認されています。

学習証明書は、成績や卒業資格の証明に限らず、特定の知識・スキル・コンピテンシーを示すデジタルな資格情報として扱われます。紙の証明書やPDFの送付に頼る運用では、発行元の確認、改ざん確認、翻訳、提出先での審査に時間がかかります。ウォレットを介した証明が一般化すれば、ユーザーは必要な属性だけを提示し、受け取る側は機械的に検証しやすくなります。

標準技術を組み合わせた相互運用

EU公式レポートによると、実証ではOpenID for Verifiable Credential Issuance(OpenID4VCI)、OpenID for Verifiable Presentations(OpenID4VP)、OpenID4VC High Assurance Interoperability Profile(HAIP)、SD-JWT VC、ETSI TS 119 602に基づく信頼リストなどが使われました。

注目すべき点は、異なる国・地域の制度やアーキテクチャを前提にしながら、既存の国際標準を組み合わせて発行、提示、検証まで到達したことです。第1段階では提示シナリオが確認され、第2段階では信頼リストを使った発行・提示の組み合わせまで広げられました。レポートでは、6通りの発行者・ウォレット・検証者の組み合わせがすべて成功したとされています。

次の焦点は法的な相互承認へ

技術実証の成功は大きな前進ですが、実社会で使うには、相手国の身元管理システムやトラストサービスをどのように法的に認めるかという課題が残ります。Biometric Updateの記事でも、相互承認には国際的な合意や責任ルールの整備が必要だと指摘されています。

DID/VCやデジタルウォレットの社会実装では、「技術的に検証できる」ことと「制度上その証明を受け入れられる」ことをつなぐ設計が重要になります。今回の実証は、日本とEUがその接続に向けて、技術面の土台を一歩具体化した事例と言えます。

日本ではマイナンバーカードの民間利用やスマートフォン搭載が進み、EUではEUDI Walletの導入準備が進んでいます。今回のような越境実証が増えることで、教育、金融、行政手続き、雇用など、国境を越える本人確認と資格確認のあり方が大きく変わっていく可能性があります。

参考資料