ニュース原文:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001929.000033034.html

海外の顧客やユーザーに自社のサービスを提供する際、事業の最大のボトルネックとなるのが「本人確認や資格証明」のプロセスです。

現地の身分証や証明書を画像でアップロードさせ、自社のスタッフが翻訳ツールを片手に目視で真贋判定を行う業務は、膨大なコストを生むだけでなく、手続きの煩雑さからユーザーの途中離脱を招く大きな原因となっています。

TOPPANと韓国のデジタル身分証明書基盤を牽引するRaonSecure(ラオンセキュア)が2026年7月に開始した実証実験は、この実務上の課題を根本から解決するアプローチです。両社はデジタル証明書(VC:Verifiable Credentials)を用い、国境を越えたデータの相互利用に向けた検証を開始しました。

「データの越境」を阻む技術と制度の壁

現在、オンライン上で「自分が何者であるか(あるいは特定の資格を持っているか)」を安全に証明する仕組みとして、デジタル証明書の導入が世界中で進んでいます。

しかし、これを国外のサービスで利用しようとすると、国ごとに異なる法規制や技術仕様が壁となります。たとえば、ある国で発行されたデジタル学生証や資格証明書が、別の国のシステムでは検証できず、結局は紙の原本や翻訳証明の提出を求められる事態が生じています。データのやり取りにおける相互運用性の欠如が、グローバルなビジネス展開や人材流動化の足かせとなっているのが現状です。

日韓の技術とノウハウを融合したトラスト構築

この課題を解消するため、国内で証明書の発行・検証基盤を推進してきたTOPPANと、韓国政府主導のデジタルID構築で実績を持つRaonSecureが協同します。

今回の実証では、日本の創価大学と韓国の中央大学校の協力を得て、交換留学の手続きをテストケースとします。学生の成績証明書や在学証明書といったデータをデジタルで発行し、国境を越えた先のシステムでも安全かつ確実に「本物である」と検証できるかを、技術面だけでなくビジネスや制度の観点からも検証します。

公的IDから「民間領域」の証明への拡張

今回の実証において見逃せないのが、扱うデータがパスポートのような国家発行のIDではなく、大学の成績証明書という「民間領域」の証明である点です。

現在、マイナンバーカードやパスポートといった公的身分証の越境連携は、各国政府の主導で進んでいます。一方で、実際のグローバルな採用活動やB2B取引において頻繁に求められる「学歴」「民間資格」「企業の在籍証明」といったデータは、いまだに国境を越えるとオンラインでの真贋確認ができません。

今回の実証は、こうした民間や教育機関が発行するデータを、世界中のシステムでそのまま検証できるようにするための重要な一歩になります。

グローバルなデータ流通を見据えた事業設計

国家や企業ごとに分断されていた「信頼」が国境を越えることは、単なるインフラの進化ではなく、企業の売上に直結するビジネス要件です。

たとえば、インバウンド顧客に向けたサービス提供や、海外向けECサイトでの年齢確認を想像してみてください。現地の身分証をアップロードさせ、自社スタッフが目視で確認する現在のアナログなフローは、運用コストの肥大化と、手続きの煩雑さによる顧客の途中離脱(コンバージョン低下)を招く最大のボトルネックとなっています。

こうした「国境を越えた本人確認のハードル」をクリアし、離脱ゼロの取引環境を作るために不可欠なのが、DID(分散型ID)やVCといった国際標準の技術です。現地のシステムで発行されたデジタル証明書を自社サービスで直接検証できるようになれば、企業は不要な身分証画像を抱え込むリスクを減らしながら、瞬時に取引を完了させることができます。

海外展開やインバウンド需要を取り込む際、こうした標準規格をいかに自社の業務プロセスに組み込むのか。データの利便性と確実性を両立させる事業モデルの構築が、今後のグローバル市場における競争優位性となるでしょう。