ニュース原文:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000344.000036656.html

三菱UFJフィナンシャル・グループと三菱UFJ信託銀行は2026年6月30日、「DID/VC共創コンソーシアム(DVCC)」は、新たに「AIエージェント×金融取引分科会」を設立したと発表しました。メガバンクをはじめとする金融機関や主要ベンダー、法律事務所など28社が参画し、AIエージェントがユーザーに代わって自律的に金融商品取引を行う時代に向けた課題整理と技術検証を開始します。

エージェンティック・コマースの台頭と金融分野への波及

生成AIの進化により、ユーザーの意思決定をサポートする段階から、AI自身が自律的に決済や商取引を実行する「エージェンティック・コマース」への移行が世界的に進みつつあります。海外ではすでにECや決済分野でAIエージェントによる代理取引の標準化が進んでいますが、厳格なコンプライアンスが求められる金融取引においては、システム的な安全性と法的根拠の両立が不可欠です。

本分科会では、一般ユーザーが日常的に行う投資信託などの金融商品の購入・売却、あるいは運用判断の一部をAIエージェントが代替するユースケースを想定し、既存の金融実務におけるプロセスをどこまで自律的に処理できるかを検証します。

自律型取引における法令解釈とガバナンスの課題

AIエージェントが金融取引を代行する際、最大の壁となるのが「そのエージェントが本当にユーザー本人の正当な指示(権限委任)を受けているか」というトラスト(信頼性)の担保です。

単なる自動化プログラムとは異なり、動的に判断を下すAIエージェントに対しては、金融商品取引法などの現行法令に基づいた解釈の整理が必要です。本分科会では、法律事務所も交えた体制で、AIエージェントがユーザーから委任された権限の範囲をどのように定義し、システムとしてガバナンスを効かせるかという初期的な論点整理を実施します。

デジタル証明書を用いた技術基盤と今後のロードマップ

こうした権限委任の正当性をシステム的に証明する技術基盤として、本分科会が着目しているのがDID(Decentralized Identifier:分散型ID)およびVC(Verifiable Credentials:検証可能な資格情報)です。

ユーザーからAIエージェントに対する「取引権限の委任状」をVCとして発行・付与することで、金融機関側はアクセスしてきたエージェントの身元と権限を暗号技術を用いて瞬時に検証できるようになります。分科会ではこのVCの実装要件を2027年3月までに整理し、次年度には実機を用いた実証実験(PoC:Proof of Concept)へと移行するロードマップを描いています。

次世代の金融インフラを支えるアイデンティティ技術

金融取引という極めて高い信頼性が求められる領域において、AIエージェントの自律的なオペレーションを組み込む試みは、次世代の金融インフラのあり方を大きく変える可能性を秘めています。この変革を安全に実現するためには、アクセス元が正規の権限を持ったエージェントであることを特定の管理者に依存せず証明する仕組みが欠かせません。

ユーザーの同意や委任関係を暗号的に裏付けるDID(分散型ID)やVC(Verifiable Credentials)、さらには必要な権限情報のみを安全に連携できるSD-JWT(Selective Disclosure for JWT)といった標準技術の実装は、人間とAIが共存する自律型金融エコシステムを構築するための不可欠なピースとなっていきそうです。