カナダ・オンタリオ州政府は10月23日、州が発行する身分証などのデジタル化を段階的に進める方針を発表しました。利用は任意とし、物理的な身分証だけを取得・利用する権利を保護する法案を2027年後半に提出する意向です。

ニュース原文:オンタリオ州政府の発表

最初の対象は運転免許を持たない住民向けの写真付き身分証

州は2026年後半から関係者との協議を始め、その後にOntario Photo Cardのデジタル版を導入する計画です。Ontario Photo Cardは運転免許証を持たない州民向けに政府が発行する写真付き身分証で、銀行口座の開設やサービスの利用時などに本人確認のために使われます。

今回の計画は、こうした公的な証明書をモバイル端末に保存し、オンラインや対面でのサービス利用に提示できるようにするものです。州はPhoto Cardの利用場面を検証し、その経験を将来のデジタル運転免許証や健康保険カードの導入につなげるとしています。

デジタル化と物理カードの選択を並行して進める

計画の特徴は、デジタル版の開発と併せて物理カードの利用を法的に保護しようとしている点です。州は各省庁、関係者、一般住民の意見を取り入れ、プライバシーの保護と公共の信頼を確保しながら制度を設計する方針を示しました。

今回の発表時点では、協議と利用場面の検証を経て導入する段階です。物理カードを利用する権利の保護も、今後提出する法案の構想として扱う必要があります。

豪州では運転免許証をアプリで提示、EUは国境を越えた利用を整備

海外には、デジタルの身分証を日常の本人確認に使う事例があります。豪州ニューサウスウェールズ(NSW)州では、Service NSWアプリでデジタル運転免許証を提示できます。州政府は、多くのパブやクラブ、州警察が受け入れていると案内しています。確認する側は画面の特徴を目視するか、QRコードを読み取って有効性を確かめます。

NSW州政府の案内によると、利用は任意で、物理カードも引き続き使います。受け入れに対応していない事業者もあるため、州は物理カードの携帯も推奨しています。デジタル版の提供と、利用先での受け入れが別々に進む様子が分かる事例です。

米国でのオンライン本人確認への活用については、Login.govのmDL対応を取り上げた記事で、導入の狙いと提供企業の役割を整理しています。

一方、EUは加盟国をまたぐサービス利用を想定したデジタルIDウォレットの整備を進めています。欧州委員会の説明では、加盟国が2026年末までにウォレットを提供し、銀行口座開設時の本人確認、運転免許証の保存・提示、電子署名などに使えるようにする方針です。これらは想定用途であり、すべての国・サービスで利用開始済みという意味ではありません。

EUのウォレットを構成する要素や発行・提示・検証の役割については、EUDI WalletのARF 2.6.0を解説した記事も参照できます。2025年時点の同版を対象にした解説です。

NSW州は運転免許証の日常的な提示、EUは国境を越えた本人確認や文書の共有を扱っています。オンタリオ州は、運転免許を持たない住民向けのPhoto Cardを最初の対象とし、その検証を免許証や健康保険カードへ広げる計画です。

オンタリオ州は2026年後半の協議から段階的に進める

オンタリオ州が示した次の手順は、2026年後半に始める協議とPhoto Cardの利用場面の検証です。デジタル版の具体的な提供開始日や、運転免許証・健康保険カードへの展開時期は今回の発表では示されていません。物理カードだけを取得・利用する権利を保護する法案は、2027年後半の提出を予定しています。