ENS LabsとGlobal Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)は2026年9月28日、ウォレットのアドレスなどを人が読める文字列で参照する「ENS名」と、法人のデジタルIDであるvLEIを結び付ける取り組みを公表しました。

ENS名を使う相手が、どの法人と関係しているのかを確認できるようにする構想です。現在は開発・仕様提案の段階にあります。GLEIFの発表

例えば取引先から送金先を案内された場合、アドレスに送れることに加えて、その宛先と取引先企業との関係を確かめたい場面があります。今回の取り組みは、名称と法人の結び付きを確認するための情報を整えるものです。

ENS名とは、長いアドレスを参照するための読みやすい名前

Ethereum Name Service(ENS)は、長いウォレットアドレスなどの情報を、人が読みやすい名前から参照できるようにする仕組みです。例えば「○○.eth」のような文字列がENS名に当たります。対応するウォレットやアプリは、そのENS名に設定されたアドレスを取得できます。ENS公式サイトの説明

これはWebサイトのドメイン名から接続先を参照する仕組みに似ています。

ただし、企業名に似たENS名を見つけても、それだけで当該企業との関係を確認できるわけではありません。ENS名からアドレスを調べることと、そのENS名を実在の法人に結び付けることは、別の確認です。

今回その法人側の根拠として使おうとしているのがvLEIです。GLEIFが運営するLEIの基盤では、法人を世界共通の識別子で区別します。vLEIは、この法人の識別情報をデジタルに検証できる形へ広げたものです。

GLEIFはvLEIを、Verifiable Credentials(VC)を用いる組織のデジタルIDとして説明しています。法人に加え、その法人を代表する人物の身元や役割を扱い、署名された資格情報の連鎖を通じて信頼の根拠をたどれる仕組みです。vLEIの概要

両者を結び付けると、アプリケーションはENS名を入口として参照し、そのENS名に対応する法人の情報を検証する流れを組み立てられます。

双方の承認を署名付きの情報で表す

ENS Labsの説明では、ENS名とvLEIの関連付けを、双方が承認したことを確認する案が示されています。

説明用に、あるENS名と「A社のvLEI」を結び付ける場面を考えます。まずENS名の所有者が、そのENS名と法人側の識別子を記したデータに署名します。続いて法人側が、自社のvLEIのアイデンティティを使ってその署名を証明します。関連付けの情報はENS名を通じて公開され、検証者は両方の記録を調べて結び付きを受け入れるか判断します。

この例で表そうとしているのは、「ENS名の所有者がA社との関連付けを認め、A社側もその関連付けを認めている」という関係です。会社名をプロフィールに記入する操作に加えて、承認の根拠を署名で確認できる形を目指しています。実際に使うデータ項目や検証手順は、今後の仕様で確認する必要があります。

vLEIの発行とENS側の仕様はそれぞれの枠組みで扱う

ENS Labsは、ENS側の実装方法をENS Improvement Proposal(ENSIP)として定めることを次の段階に挙げています。ENSIPは、ENSの共通仕様を議論するための公開技術提案です。vLEIの発行・運営・検証は、GLEIFの既存の枠組みに従う方針です。

vLEIを取得する法人は、LEIを取得したうえで、GLEIFの資格審査を通過した発行者に申請します。発行・維持・失効に関する料金は各発行者が設定します。ENSとの関連付けに向けた検討と、法人としての資格情報を取得・管理する手続きは、それぞれ確認する必要があります。GLEIFの取得案内

まとめ

GLEIFは、取引相手の確認や、トークン化した資産を支える法人の識別などを想定用途として挙げています。例えば同じ会社が複数のネットワークで活動する場合も、共通のENS名と法人の関係を参照する使い方が考えられます。

オンチェーンでの取引におけるKYBというユースケースでVCの活用が考えられる、次世代金融の新たなユースケースと感じました。

なお、今回の発表は検討のお知らせですので、対応アプリへの導入や本番利用を判断する際には、今後のENSIPと検証手順の具体化を追う必要があります。