ニュース原文:https://didit.me/ja/blog/didit-7-5m-seed-infrastructure-identity-fraud/
デジタルIDプラットフォームを開発するDiditは、シードラウンドで750万ドル(約11億円)の資金調達を実施したと発表しました。調達した資金は、世界的に急増する「なりすまし詐欺」に対抗するための、新たな認証インフラ構築に投資されます。
AI技術の悪用によって従来のオンライン本人確認(eKYC)の突破事例が増える中、企業のデータセキュリティ戦略を大きく変える可能性のある動きとして注目されます。
生成AIによる「ディープフェイク」が既存の本人確認を無効化する
現在主流となっている、顔写真付き身分証と本人の顔(セルフィー)を撮影して照合する本人確認方式は、大きな課題に直面しています。生成AIの進化により、極めて精巧な偽造画像や動画(ディープフェイク)が容易に作れるようになり、従来のシステムをすり抜ける不正アカウントの作成や乗っ取りが急増しているためです。

画面の向こう側にいる人物が「本物の人間か」を検証するコストは、企業にとって過去最大に跳ね上がっています。
企業ごとに分断された認証から「再利用可能なインフラ」へ
Diditが目指しているのは、各企業が自前で高コストな不正対策ツールを導入する現状からの脱却です。
現在のインターネットでは、ユーザーは新しいサービスを利用するたびに同じような本人確認書類を何度も提出させられます。Diditはこれを、一度検証された「確実な本人情報」を安全に使い回せる共通のインフラへと置き換えようとしています。
この仕組みが普及すれば、事業会社は自社で重厚な本人確認システムや大量の個人情報を抱え込む必要がなくなり、外部の信頼できる基盤が保証する検証結果だけを受け取ってサービスを提供できるようになります。
高度なセキュリティと摩擦のないUXの両立
セキュリティ要件を厳しくすればするほど、ユーザーの入力負担が増えてサービスの離脱率につながる問題があります。

しかし、認証が共通インフラ化されれば、ユーザーは手元のスマートフォンの生体認証を一度通すだけで、あらゆるサービスへ瞬時にログイン・登録が可能になります。企業側は、高度な不正対策と、数秒で完了するシームレスな顧客体験(UX)を同時に実現できます。
新規事業・データ活用が直面する次世代の認証要件
Diditのような「認証のインフラ化」を推進するスタートアップの躍進は、一般企業の事業設計に大きなパラダイムシフトをもたらします。
最大のインパクトは、これまで自社で抱え込んでいたセキュリティ投資とデータ管理のあり方が根本から変わる点です。
高度化するAI詐欺に対して単独でシステム改修を続けるのではなく、共通のデータ検証基盤を活用することで、対策コストを大幅に最適化できます。同時に、自社のサーバーに大量の個人情報や身分証画像を保存するリスクを手放し、「検証済みの事実」だけを取り扱うアーキテクチャへの移行が、今後の情報漏洩対策のスタンダードとなっていきます。
さらに、この移行はコンプライアンスの枠にとどまらず、顧客体験(UX)の劇的な向上に直結します。登録時の煩雑な本人確認プロセスを排除し、外部基盤から安全にデータを引き継ぐ設計を採用できれば、ユーザーの途中離脱を防ぎ、圧倒的にスムーズな「入力ゼロ」の取引環境が実現します。
生成AIの普及に伴い、インターネット上の「信頼」の作り方は変わりつつあります。自社でゼロから本人確認を作り込むのではなく、こうした共通の認証インフラをいかに事業へ組み込み、安全と成長を両立させるか。データビジネスの現場において、今まさに検討すべき重要なテーマと言えます。

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